東京高等裁判所 昭和42年(う)253号 判決
被告人 奥村稔 外五名
〔抄 録〕
弁護人の控訴趣意第一点について。
原判決摘示に係る右被告人の犯罪事実(第四の一及び二)は、これに対応する原判決挙示の証拠を総合すれば、優にこれを認定することができ、一件記録を精査しても、右事実認定に過誤があるとは認められず、原判決が該事実を銃砲刀剣類及び火薬類の不法所持罪に問擬したことに違法の廉は存しない。
なお、各所論の点につき附言するに、原判示各拳銃(第四の二については附属の実包十七発を含む)が原判示日時、原判示被告人藤田方(自宅)において、原審相被告人永瀬和男の手から被告人藤田の手に渡り、各即日被告人藤田の手から立田捨已の手に渡つたことは、成程各所論のとおりである。
しかし、右各拳銃(第四の二については附属の実包十七発を含む)は、いずれも原判示日時、原判示被告人藤田方(自宅)の二階の応接間において、原審相被告人永瀬和男の手から被告人藤田の手に渡り、被告人藤田はこれを手にとつて眺め一応自己の物とすることに決めたが、考えるところがあつて腹心の配下立田捨已にこれを預けようと考え、応接間のブザーを押して階下から立田捨已を呼び、右相被告人永瀬が応接間を退出して階下へ降りるのと入れ違いに応接間へ入つて来た右立田にこれを手渡したものであつて、その被告人藤田の手裡に存した時間は数分間という短かい時間ではあるけれども、この間同被告人はこれを手にとつて眺めて楽しんでおり、一旦は自己の物とすることに決めた後に、自ら直接に立田捨已に手渡して同人に預けており、単に原審相被告人永瀬和男と立田捨已との授受の仲介者として、いわゆる右から左へと受渡しを取り次ぎ、その間被告人藤田に独立の実力支配を認め得ないような瞬間的な握持と評すべきものでなかつたことは、一件記録上明白であるから、各所論は採るを得ない。
論旨は理由がない。
(坂間 栗田 沼尻)
注 (本件は前科遺脱と、擬律違背旧法を適用すべきに新法を適用により破棄)